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トゥースたち3兄弟は、とある使いの旅の途中、2つの別れ道でどちらへ進むべきか迷っていた。
「絶対にこっちだよぅ〜!」
突然、次男のワンスがそう言い出した。
「……ぼくは、こっち…だと思う…」
今度はその弟、三男のゼロスがこう言う。
「違うよ!絶対右〜!ゼロスはボクの勘が信じられないって言うの?」
ゼロスの言葉を思いっきり否定するように、ワンスは両手をいっぱいに広げている。
「いや、…そもそも勘で道を選ぶっていうこと自体間違ってる…と思うんだけど…」
「でも、誰もどっちが正しい道かなんて分からないんだから、勘で選ぶ以外どうするっていうの? ゼロスのそれは、勘とはどう違うの? それともゼロスには何かいい考えでもあるの?」
「……………今はない。だけど…」
この場所へは、2人…いや、3人とも以前にも一度来たことがあるはずなのだが、何故だかどちらが正しい道なのか、すっかりと忘れてしまっていた。
別れ道で足止めされてから、30分ほど過ぎた頃だろうか、未だにトゥース達一行は、同じ場所にいた。
「絶対、絶対、ぜーーーったいこっち!!!!」
相変わらずワンスは大きな声で騒いでいる。
「…いや、やっぱりこっちだ。ぼくは前にここを通った覚えがかすかだけどあるような…気がする…」
「……それって、ホントに本当?」
「……………」
…何故か、ゼロスは黙り込んでしまった。
「…なあ、ワンス、ゼロス…二人ともいい加減言い争うのはやめて先に進まないか?」
しばらく様子を見ていた長男のトゥース。2人を見兼ねたのか2人の間に割って入ってきた。
「じゃあ、トゥース兄ちゃんは、どっちが正しい道か知ってるの?」
ワンスとゼロスが同時に、トゥースにそう尋ねた。
「う…。そ、それは………」
二人の間に割って入ってみたものの、特に良い考えもなかったらしい。
「………おっ! そ、そうだ……!く、くじ引きで決めるってのはどうだ!?な?なっ??いい考えだろ??」
これは、いかにも苦し紛れ、といった様子だ。
「………………。」
「………………。」
しばらくの間、沈黙が続いた。
「な、何だよ。」
ワンスもゼロスも、何も言わず、ただ冷めた目でトゥースを見つめている。
それから更にしばらくしてから、ようやく2人は口を開いた。
「なーんだ…知らないんだ」
「知らないんだ」
いつも、仲の悪いワンスとゼロスだが、こんなときばかりは、気が合うらしい。
ほぼ同時にそう呟き、口調はどこまでも冷たかった。
トゥースは、思った。
(なんで、オレがこんな扱いされなきゃならないんだ…)
そんなことを考えている間にも、また二人の言い合いが始まっていた。
「だーかーらー、絶対こっちだってー!」
「いや、絶対、論理的に考えても…」
(誰か、こいつらを止めてくれ〜)
「何だぁ?こりゃあ…?」
緑髪に赤い鉢巻をした長身の青年が、手にした銃をくるくると色んな角度から確認するように見回している。
彼の側には、黒髪の少年(こちらは白い鉢巻をしている)もいたが、それを黙って見て見ぬふりをしていた。
「……なあ、ガイ。…コイツ…最近、拾った銃なんだが…見た目は新品同様、…なのに中身は完全にぶっ壊れてやがるみたいだ。一体どう扱ったら、こんな壊れ方するんだか……」
あまりに不可解な壊れ方をしていたため、機械好きな彼にとっては、少々理不尽なものがあった。一方、話しかけられたガイはというと特に興味を示すこともなく無関心だった。
「………ん? よく見ると、こんなところに『G59』なんて書いてあるが、………何だろうな…?これ……」
銃には意味不明な英数字が書かれていたが、実は銃マニアでもある彼にも意味は分からなかった。
「……おい。ガイ、お前は、これが何の意味だか分かるか?」
彼は少しの間考えたあと、側に居た黒髪の少年、ガイにその謎の文字の部分を見せながらそう訊いてみた。
だが、ガイはナユタの方に振り向くことなく、透かさずこう答える。
「ナユタ、お前が分からないのなら、僕には尚更分かるわけがないだろ。僕に訊くのは見当違いってやつだよ」
「ま、まあ、そう言えばそうだが。…一応、訊いてみたかっただけだ。そんなに不機嫌になるなよ」
ナユタは苦笑した。
ガイは、銃の事に関しては、あまり興味がないらしい。だが、いつもナユタには嫌というほど、銃についての話を聴かされているためか、最近では、銃に関する事もほんの少しは分かるようになった。…が、同時に銃の話を振られる度に少し不機嫌そうな態度を見せる傾向がある。
ナユタは、壊れた銃を修理しようと、一時間以上もそれに没頭していた。
しばらくして、やっと直すことができたのか、一つため息をついたあと、その間、ずっと閉ざしていた口を開く。
「ふぅ………っと、よし!おい、ガイ!一応直してみたんだが……試しにお前、撃ってみないか?」
何故かナユタはニヤニヤした顔をしている。
「………。ナユタ…お前、知ってて言ってるだろ?僕には銃なんて使いこなせないよ。それに…その顔…ちゃんと直ったのかも怪しいところだな。黒焦げになるのだけはごめんだ」
あっさりと断られてしまった。
「…さすがに引っ掛らないか。あ〜あ、つまらねえなあ。…せっかくちょっと遊んでみたんだがな…」
そう言うとナユタは、その銃の引き金を引いた。
すると、銃口からは銃弾ではなく、なんと、可愛らしい作り物の花が飛び出してきた。
「…なんだ…?結局直せなかったのか?」
きょとんとした表情でガイはそれを見ていた。
「ああ。残念だが。…それに『G59』の謎も、解明不能。ははっ。いい事なしだ」
「ねえ、お姉ちゃん、あれ、なあに?」
リシナが、木にぶら下がっていた、枯れた葉っぱのような茶色っぽい物体を指差した。
「あら。蓑虫さんだわ。こんなところで見られるなんて、珍しいわね」
側にいた姉のリスティンは、とても嬉しそうに笑っている。
リシナは、それを聞いたとたん、少し青ざめた顔になった。
「……ミノ…ム…シ?……これって、葉っぱじゃないの…?」
「そうよ。蓑虫さんは、蛾の幼虫さん。蛹になる前の姿ね。可愛いわねvvねえ、リシナ♪」
気が付くとリシナはその場には既に居なかった。
「あ、あら?リシナったら、どこ行っちゃったのかしら?? …おかしな子ねぇ」
「くぉおおらあぁー!!! 零斗!! 今すぐそれを、返しなさい!!!」
紫の髪の活発そうな少女が、包丁をとハリセンを持って、少年を部屋の隅へと追い込んだ。
零斗と呼ばれた少年の手には、化粧品らしき瓶が握られている。
「へっ!や〜だねっ!アッカンべ〜だ!! いやあ。しっかし、壱流姉ちゃんがこんなものに興味があったとはね〜。少しは女らしいところもあったわけだ」
くっくっくっと、少年は嘲笑うかのように笑っている。
壱流はそれを見て、一瞬、顔を赤らめ恥かしそうな表情を見せる。しかしすぐに表情は元に戻る。
「ふん…!!!!! 何さ!アタシが化粧とかして何が悪い!!」
「誰も悪いなんて言ってないだろ?ただ、姉ちゃんみたいなブスが化粧したところで、何にも変わらないと思うけどな〜」
またも、ククッと笑ってみせる零斗。
「くっ!…こんのおおおぉ…!!! よくも言ったわね〜!! 零斗、今日は晩飯抜き決定!!」
「げっ!? マジかよ。またその手かよ……そればっかりは簡便してくれよ〜」
いたずら好きの零斗も、この手ばかりには弱いらしい。
「…じゃあ、素直にアタシにあやまりなさい。そしてそれを返すの。もしそれでも言うこと聞かないなら……」
「……聞かない…なら…?」
零斗は恐る恐る訊いてみた。
壱流は、左手に持っていた包丁を逆手に持ち、右手に持っていたハリセンを構え、
「… あ ん た を 殺 し て 取 り 返 す ま で !! 」
その言葉には、根拠の無い凄みがあった。
身の危険を悟った零斗は、持っていた化粧の瓶を壱流に向けて差し出した。
「……わ、分かったよ。返せば良いんだろう?返せば!!」
「ごめんなさいは!?」
「………ごめん…なさい〜」
姉強し。
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