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No.006-歯痒い
「今日は楽しかったよ、ワンス。それじゃあまた!」
今の今まで仲良く話をしていたのに、突然彼はくるりと身を翻して立ち去ろうとした。
「あ!麒麟君、ちょっとまって!」
ボクは、そんな彼のことについて、いつも気になっていたことがある。
「何?ワンス。まだ何か僕に用があるの?」
ボクは、黙って頷いた。
「だったら、手っ取り早く済ませて〜。僕、こうみえて意外と気が短いんだよね」
口調は軽いけど、言ってることは結構きつい。
「………麒麟君…君は、いつも突然、ボクたちの前に現れて…そして、いつもボクたちを助けてくれるよね?本当にいつもありがとう。でも、いつも助けてもらってばかりで、お礼がしたいんだけど…ボクにはなにも思いつかなくて…」
本当に彼には、いつも危ないところを助けてもらっている。
この間だって、そうだった。
どうしても倒せない魔物と遭遇して困っていたところに、彼が現れ、弱点を教えてくれた。
助けてもらうと言っても助言をくれるだけなのだけど。
「ああ、そのことだったら、気にしなくていいよ。ボクが勝手にやっていることだしね。それに、こうやってたまに君達に会って、話をするのも楽しいから」
彼は、笑顔でそう答えてくれた。
「……そう言ってくれると、嬉しいよ。……あの、それともう一つ、君に聞きたいことがあるんだけど…」
「ん??」
そう、本当に気になっていたのはこっちだ。
「……君は…突然現れたかと思えば、いつも何時の間にかいなくなっちゃうし…前から気になっていたんだけど…一体君は何……」
「…あっはははははは!!」
彼はボクの言葉を遮るように、突然、狂ったかのように大声で笑い出した。
「…麒麟…君…?」
あまりに突然なことで、動揺しているボクに、彼は、今度は不敵な笑みを浮かべて見せた。
「その質問にだけは、答えられないね。…自分で考えてみなよ。まあ、どうせ君達の頭のレベルじゃ、いくら考えても僕の正体は暴けないだろうけどね!」
「…………!」
「はははっ!冗談だよ。じゃあ、また会おうね!ワンス」
彼はそう言うとすぐに、闇の中へ消えていった。
もう一つのストーリー…
「ねえねえ、ゼロス君ってさあ、何でいつもむすっとしてるの??それに無口だし…」
麒麟は不思議そうな顔をしてトゥースにそう問いかけた。
「……それが…俺たちにもよく分からないんだ」
「ふーん、そうなんだ」
トゥースと麒麟が話している後ろから、ワンスが歩いてきた。
ワンスは麒麟の背中にふと目を向ける。
「………あ」
ワンスは何かに気づいたらしい…。
麒麟とトゥースは尚も話を続けている。
「あ!分かった!! ゼロス君って、本当は…実はおしゃべりなんだよ。でも話し出すと止まらないから、自粛してるんだよ。きっと!」
「……そう…なのかなあ。いや…でもそれと無表情なのはあんまり関係なさそうじゃないか?」
「うーん…そういえば…そうだよね〜。わっかんないなあ…」
「………………」
ワンスはまだ、麒麟の背中をじっと見ている。…そして、何故かちょっと逃げ腰でもあった。
トゥースと麒麟は、相変わらず楽しそうに話している。
「あはははははは!! トゥース、その話面白い!もっと続き聞かせてよ!」
「お!? そうか?じゃあ……」
「……あ、あの〜、麒麟君?お話中、悪いんだけど〜」
ワンスは、かなり弱々しい声で、麒麟にそう話しかける。
「なんだよ!ワンス、今取り込み中!! 後にして!」
「で、でも〜」
「んもうー!仕方ないなあ、で何?手っ取り早くお願いするよ」
「…うん、…あの〜えと……せ、背中に……10センチくらいの…」
「くらいの?」
「くらいの…ゴキブリが……」
一瞬、麒麟の表情が固まった。
「……冗談…だよね?? あはは…はは」
「残念ながら…本当だよ」
ワンスは無理にニコニコしながら言った。
麒麟は恐る恐る自分の背中を見た。
すると、そのゴキブリは既に肩の位置まで這い上がってきており、麒麟の目から超至近距離にいた。
「うわあああああああああぁぁぁ!!!」
麒麟はあわてて振り落とそうと走りまわった。
しかし、簡単には落ちない。そうこうしているうちに、麒麟は何時の間にか、闇の中へ消えていってしまった。
ただ、悲鳴だけはそこら中に響き渡っていたが…。
この絵は…どうみても、「歯がゆい」絵じゃないですね。これは絵の修行のはずなのに、
「歯がゆい」絵が描けなかったことに、私は「歯がゆい」です。(苦笑
■登場キャラクター:ワンス、麒麟、(トゥース)
No.007-あかずの扉
「リスティン…? 何やってるんだい?」
「うわっ!!? お、お母さん、な、なあに?こんな時間に」
もう既に寝ていただろうと思っていた母に、突然後ろから話しかけられ、吃驚仰天。
「何…って、それはこっちの台詞だよ!アタイはただ、2階の方で、ごそごそ音が聞こえるから、何かと思ってちょっと見に来ただけだよ。アンタこそこんな時間にこんなところで何やってんだい?」
至って冷静な母。それに対して私は、未ださっきのドキドキがおさまらない。
「え、ええっと…あの…その〜」
「……? あ、そういや、そこの部屋の戸、少し前から鍵がかかってて、あかないんだよ。鍵もどこかになくしちまってね。…リスティン、アンタ何か知ってるんじゃないのかい?」
流石は母…。もしかして…既にばれてる…?
「や、やあね。お母さんったら。私はこの部屋の中に何があるかなんて、何も知らないわよ!!」
よし!これでバッチリごまかせたはず。
「…………。そうかい?ならいいんだけど…。それじゃ、アタしゃもう寝るよ。アンタも早く寝なさいよ!」
「は〜い。お休みなさい。お母さん」
よかった…。
─── 10分後 ────
「ふうぅ。良かったね。バレなくて…」
ドアが少し開いて、その隙間から一匹の子猫を抱いた妹のリシナが出てきた。
彼女の後ろには、他にも4,5匹の子猫たちがいる。私は、部屋の中に入って、そうっと静かにドアを閉めた。
「うん。ちょっと危なかったけど、私が上手く言ってごまかしといたから。きっと大丈夫よ」
「本当に…?」
リシナは少し疑わしそうにしている。
私って、そんなに信用ないのかしら……?
「それにしても、……少し前に、人族たちの住む村にこっそり行ったときに、捨てられてたこの子たち、……可哀想で、つい拾ってきちゃったけど、これでよかったのかな? お母さん、こういうこと、すごく厳しいし、お父さんは大の猫嫌いだから、…バレたら、大変なことになるよね…」
リシナはとても不安げな顔をしている。
それもそのはず。子どもたちだけで、人族の村に行った事がバレただけでも怒られるのは分かっているのに、
その上、こんなにたくさんの子猫たちを拾ってきた…なんてことばバレてしまったら……。
私たちだけが怒られるだけならまだいい。問題は、子猫たちの運命だ。父に追い出されてしまいかねない…。
私は、リシナの肩にそっと優しく手を置いた。
「リシナ。この子たちを拾ったときに言ったでしょう?二人で頑張って大人になるまで育ててあげようって。この子たちが魔物になったりしたら、どうするの?」
「あっ……」
私の言葉に、リシナは、はっとしたようだった。
「そう…だよね…。この子たちみたいに人間に捨てられた子たちが、長い年月をかけて、悪い魔物になったりすることもあるって、…前に長様が言ってた…」
「そう…少なくともこの子たちは、そうならないように、私たち二人で育てていきましょうね。お母さん達にばれないように…」
「そうだね…」
リシナと私は、そう話しながら子猫をぎゅっと抱きしめた。
No.008-水の中
「あ!見つけた!もう、どこに行ったのかと思えば、こんなところにいたのか…。探したぞ」
ルナは、湖の底でふわふわと動いていた、ビー玉のような碧色に光る小さな玉に向かってそう呟いた。
「でも、お前は自ら光って、僕に居場所をおしえてくれたね?……ッフフ、…実は、お前、迷子になってたんだろう?」
にやりとしながらそう言うルナに対して、碧玉は、まるでしゅんと落ち込んだように少し光を弱くした。
どうやらずぼしだったようだ。
ルナは、碧玉をそっと手で握ると、すぐに来た方向へと振り返る。
「さあ、急いで戻らないと、ファイス様に叱られる!……って、…そんな訳ないか…」
一つ深いため息をついた後、水面を見上げるルナ。
「それどころか、あの人は僕のことなんか待っていてくれてもいないんだろうな……でも良いんだ。僕にはあの人しかいないから…ずっとついて行くよ…。生きている限り、いつまでも…」
光っている玉は、「キャラ紹介」でルナが右手で持っている玉です。これ、ただの玉ではありませんw ちゃっかり自分の意思を持っています。
ところで、これ、水の中にいるように見えるでしょうか?
■登場キャラクター:ルナ
No.009-ひかり
銀髪に青い瞳の小さな狐族の少年が、壊れた魔法の杖に、両手を翳し、
その両手からは、淡い黄色い光を放っていた。
隣には、つんつんとした金髪に緑の瞳の元気そうな同じく狐族の少年がいる。
「……修復の魔法ってさあ、けっこう使うの難しい時があるんだよね」
銀髪の少年は、杖に両手を翳したまま、ぼそぼそと、小さな声でつぶやいた。
「…へえ。修復の魔法かあ。そんな魔法もあるんだ」
金髪の少年は、興味津々に銀髪の少年の様子を見ている。
「ところでさあ、魔法の得意なゼロスでも使うのが難しいって思うことがあるんだね!ちょっとびっくり☆…で、それって、どんな時??」
金髪の少年は、これまた興味津々に銀髪の少年ゼロスにそう問いかける。
「…んー。この魔法って、集中してないと上手くいかないことが多いんだ…だから……」
ゼロスは、ちょっぴり複雑な表情をしている。
「……だから?」
尚もしつこく問いかけるワンス。
「……ん。だから、隣に騒がしい人がいると、すっごくやりにくい…」
ゼロスはワンスに密かに目配せをしているようにも見えた。
ワンスは、それに気づいたらしい。
「…………も、もしかして、それって、ボクのこと…?」
「…別に、そうは、言ってないけど…」
少しの間、沈黙が続いた。
「……わ、分かったよ。ボクが消えればいいんでしょ!いっそ、それならそうと、はっきり言ってくれれば良いのに」
ワンスは、しょんぼりとした様子で、とぼとぼと何処へともなく歩いていった。
「…ちょっと悪いことしちゃったかな…」
ゼロスはまたもぼそぼそと、小声でつぶやいた。
この二人、仲が良いのか悪いのか。
■登場キャラクター:ゼロス、ワンス
No.010-指先
「なあ、トゥース。…オレってもしかして、変…なのかな…?」
赤い髪に金色の瞳の山猫族の少年が、怪我をした自分の人差し指を複雑な表情で眺めている。
「あ?何だよ、零斗、いきなり」
隣にいた、少しオレンジがかった金髪の狐族の少年は、突拍子もない質問に驚く。
「……オレ…、朝起きたとき、時々前の日の夜にあったことを、全然覚えてないときがあるんだ。姉ちゃんに聞いても、『きっと、気のせいだから、アンタが気にすることないよ』とか言われちゃって…。姉ちゃんが優しいと、かえって気味が悪いし、ますます気になっちまってさあ。…それに、この右手の人差し指の傷。いつ怪我したか全く、覚えがないんだ。………な? なんか変だろ?」
口調は明るいが、どこか、その声には元気がなかった。
トゥースは、少しの間考えた後、口を開く。
「あ、ああ……。でも、俺も壱流と同じ意見だぜ、そんなに、気にすることないって。その傷だって、きっと寝てる間にベッドから落っこちたときにでも、できた傷だろ」
そう言って、トゥースは零斗の肩に手をポンと軽く叩いた。
「……うーん。まっ、それもそうだな!うん。我ながら寝相の悪さは認める…! 気にしすぎても頭いたくなるだけだ。お前の言う通り、あんまり気にしないことにするよ…。ありがとうな!トゥース!」
「……ああ」
その場を去っていく零斗の背中を、トゥースは暫く険しい顔で見ていた。
零斗は、普段は、ごく普通の元気な少年。しかし、夜になると、時々性格が豹変します。でも、そのときのことは、零斗は覚えていません。友達のトゥースはそのことを知っているのですが、今はどうすることもできない…という感じの場面ですね。
■登場キャラクター:零斗、トゥース
お題提供サイト:「happy together」